2010年10月26日火曜日

注意されたし

ルル親方の飛行任務は、部隊の通信文を、確実に輸送する事にあったので、任務途中に敵航空機と接触する事は、自ら努めて、これを避けねばならない。だけれど、親方は生まれついてのイタズラ好きであった事を、連隊長以下、部隊の人間は把握していなかった。

2〜3回目くらいまでの、飛行のときは、親方も真面目に飛行任務をこなしたようですが、段々馴れてくると、生来のトリの気性も芽生えて来たのか、指定されていた飛行経路も勝手に離れて、敵の航空機を探すようになったらしい。

この当時の航空機は、未だ黎明期にあって、飛行速度や旋回性能など、親方のトリとしての飛行能力にはまだ、及ばなかったから、人間の乗った航空機など、例え戦闘機であっても、親方の敵では無かった。

なので、始めは追いかけっこでからかって、気が済んでた親方のイタズラも、だんだんエスカレートしてくると、ノロマな飛行機の翼に乗って、揺さぶってみたり、かじってみたり、飛行士めがけてウンチを落としたり、飛行士の航空眼鏡をかすめ取ったり、と、任務をほったらかして、好き放題な事を続けていたようだ。

もっとも、通信文は所定の部隊に、ちゃんと届けていたので、親方のイタズラは、同じ航空隊でも仲の良い、一部の飛行士しか知らなかったのだけど、意外な所から、素行がバレてしまう事になる。

敵の航空部隊から傍受した、通信電文の中に、「腹にカバンを抱えた大きなトリが、我が航空機に対し、飛行妨害活動を行っているようなので、各部隊は注意されたし」という一文があったため、航空隊本部のみならず、連隊長にまで知られる事となってしまった。

そこで、ルル親方は急遽、連隊本部に呼び戻される事となり、皆は、親方もとうとう、軍務を解かれると思ったのですが・・・以下、次号。

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