2011年6月5日日曜日

床を剥がせ!

 台風で休止中の、ボランティアセンターに集積されてる一輪車。作業ではこれに、ガレキや泥の詰まった土嚢などを載せて、集積場まで運びます。この様に作業道具は全て、センター内に用意されていて、長靴や手袋も貸し出しされていました。

亘理町周辺では、海岸線から内陸に約4キロの距離まで、津波が来たそうです。海岸線付近の家屋はほぼ、取り壊しが決まっていて、ボランティアの仕事はありません。

やや内陸部では、1階天井付近まで浸水したものの、再生可能な家屋が多く残っていますから、そういう家屋の再建作業の、お手伝いをさせて頂く訳です。

リフォーム工事自体は、本職の職人さんの仕事ですが、職人さんが入る前の段階、つまり、床上浸水の家屋の、水を被った壁と床を剥がし、床下のヘドロを除去する作業が主体でした。(作業現場は、写真撮影禁止ですから、一切写真はありません。)

ですから、壊す作業が主になります。内壁の石工ボードを叩き崩し、剥ぎ取り、構造材以外の部材をノコで切り、バールで外し、床もバールでグイグイ引きはがします。壊した部材は土嚢袋に入れて、一輪車で近所の仮の集積所へ。

床下のヘドロは、古い家屋は土基礎で地面の上に、堆積してますから、地面に水分が抜けて臭いも無く、粘土状態になってるので、手で剥がして簡単に除去出来ましたが、最近のベタ基礎(全部コンクリで埋めるタイプ)で、高気密構造の家屋の場合は、水分が抜けないヘドロがそのまま、残ってますから、異臭を放ち、家の構造材を腐らせて、カビも生えている状態です。

本来、地震や湿気に強いはずの、ベタ基礎構造が、今回の津波被害では大きなアダとなっています。

これも、直ぐにポンプなどで汲み出せば、左程大きな問題にはならないかもしれませんが、今回の震災は、被害の規模も範囲も、大きすぎて、3ヶ月も経とうというのに、未だに復旧作業の手つかずの家が、まだ沢山あるのが、問題を大きくしてる様に、思う。

検査の段階では、復旧可能な判断がされていても(外見上は、水で洗えば奇麗に見えます)、ベタ基礎で堆積してるヘドロを数ヶ月も放っておくと、構造材自体の腐食が進み、結局全部建て替えの必要も出てしまうのではないか?と、これは素人考えながら、心配しています。

もし、津波や河川の氾濫で、家屋が浸水したらば、何はさておき、見た目奇麗であっても躊躇せず、一刻も早く濡れた壁と床板を剥がし、床下の水や泥を排出するべきだと、強く思いました。特に海水の場合は、河川氾濫の被害に比べて悪臭が強い、というベテランの方の話しもありましたので、腐敗が早いという事でしょうね。

しかし今回の被災地では、家主が遠い避難所で生活されているなどの事情で、まだまだ、手の付けられてない家屋も多いようです。再建出来る筈の家が、あたら腐って行くのを黙って見てるのも、残念ですし、それだけ地域の再建も遠くなってしまいますね。

リフォームを全て業者任せで見積もると、1500万円したが、ボランティアが入った後の家屋で見積もると、800万円くらいだった、なんて話しも聞きましたが、話しの真贋や値段の根拠はともかく、被災した上に、物凄い金額の負担を背負わねば、ならない訳ですね。

作業に立ち会われた、家主さんご家族の表情は、何とも表現できません。復旧作業のボランティアとは云え、目の前で自分の家が、見知らぬ人間の集団に、どんどん壊されて行く訳ですから。

築3年目という他人の家に、土足で踏み込んで、バールを振り回して、ひたすら壁や床をバリバリ、壊しまくるボランティア、というのも、冷静に考えれば、どこか異常な世界ですね。

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