そんなにまくると、せっかくの刺繍が隠れてしまう、なんて部外者の私は思うのですが、そういう着こなしの作法なんでしょうね。袖をまくるのは、つまり、働き者ですよって、自己アピールかもしれません。もちろん、長い袖の衣装の地域もあります。
肩と 袖の刺繍飾り。袖は始めから、折り返す物として縫製されてます。肩口と袖の縫い合わせは、些か乱暴で、脇にシワが出来てます。袖のサイズそのままに縫い合わせると、脇が窮屈なので、マチをとったのでしょう。
これに限らず、比較的古い縫製の衣装の大半は、首周りや肩幅、袖まわりなど、どれも大変小さく作られてます。小さなお婆ちゃんでないと、着られないのでは無いかって、思うんですが、昔の日本人も小さかった事を思えば、それが山に暮らす人のサイズの、アジア標準なのかもしれません。
肩の所の刺繍。凄いですね。糸は多くが錦糸です。刀の刃が通らないくらいに、緻密に刺繍して鎧の代わりに着て戦った、なんて話しも聞きましたが、本当かどうか。しかし、それくらい緻密な物もあります。
後ろから見た所。前の裾が特に長いのは、前掛けを付けるためです。前掛けの紐が、帯代わりになるんですね。これは普段着、野良着なんでしょうから、背負子を背負ったり、赤ん坊を背負ったりしたでしょうから、背中には刺繍がありません。この衣装が、ちょっと変わってるのは、この生地に付いた赤い色素です。何なのか、解りませんが、触った感じ、赤く細かな土のような、錆のような、何となく粉っぽい感じがします。とにかく、ワイルドな染めです!
おや?こちらは、上と同じような織の紋が入った生地ですね。そっくりじゃないですか?一体何の生地でしょう?
これは、日本の野良着です。カオナシならぬ、袖無し。おじいさんか、お婆さんが冬の野良仕事で着ていた物でしょうか。藍染め木綿の素朴な野良着です。
日本の野良着には、奇麗な糸の奇麗な柄の刺繍はありません。その代わり、生地を強くする刺し子の技法が広まりました。柄こそありませんが、これもまた細かな仕事です。
破れた所は端切れを継ぎ当てて、上から刺し子で補強してます。これが結果的に野良着の味になるのですが、元の持ち主からすれば、こんな所の写真を撮らないでくれって、心持ちでしょうね。(申し訳有りません、持ち主様。)
今は、アメリカの野良着、ジーンズをわざと裂いて履くのが、オシャレですけれど、それとこれとはまた、次元の違う世界だと思います。
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